「金色羅皇」は卸売市場からの引き合いが強く、高値で販売できるメリットがあるのですが、一方で玉焼け(日焼け)や裂果・糖度・ウルミに対してシビアなコントロールが求められます。栽培に失敗するリスクが大きい品種であるとも言えます。また標準の赤肉品種と比べ、交配日から収穫までの成熟日数が5着果(10日間)分も長く掛かるというデメリットがあります。それでも標準品種よりも2階級も大きなサイズの果実が収穫できるため、「金色羅皇」をハウスで1作出荷するのと、赤肉レギュラー品種をこの時期に2回転させ、2作分出荷するのとでは、面積は2倍違っても、売上は大きく変わらないことが判明しました。「金色羅皇」の品質基準をクリアした秀品を収穫できる栽培技術体系を確立することができれば、多くの出荷先のお客様に喜んで貰いながら、農家は大きな所得増が得られることになるのです。我々は「金色羅皇」の栽培技術を確立させるため、2〜3年ほど前からナント種苗熊本出張所の原口所長に頻繁に来て頂いては、栽培農家全員を集めての講習会を開催したり、実際の栽培時期が始まれば、栽培ステージごとに全員で圃場を巡回しての現地講習会を開催したりと、農家個々の栽培レベルを向上させ、高い水準で標準化させるための活動を入念に行っています。実際に令和6年度作では「金色羅皇」と「羅皇ザ・スウィート」を合わせて合計11回もの講習会や現地講習会を開催しています。■講習会・勉強会の様子■糖度センサーによる検品・検査の様子3●甘さと品質を糖度センサーによる検査で担保菊池すいか部会では、糖度センサーによる検品・検査を行っていますが、新たに取り組む「金色羅皇」については「糖度13度以上」という極めて高い糖度基準での選果・選別を行うこととしました。私共の糖度センサーでは、果実の南半球(下半分)全体の果肉の平均糖度を測定し、その平均値が13度をクリアして初めて「金色羅皇」として出荷されます。果実の「中心糖度」ではなく、あくまでも「南半球全体の平均糖度」が13度以上となりますので、実際には「中心糖度」は「13度」を大きく上回ることになります。お陰様で出荷先の卸売市場からは、安定して高い評価を頂戴できております。また早く出荷した方が単価が高い、遅いと単価が安いという状況を避けるため、出荷期間中の販売単価は固定化しています。(余談ですが、13度未満の果実は「金色羅皇」の名を名乗らず、一般的な「クリームすいか」として出荷していますが、従来のクリームよりも甘くて美味しいと、こちらも大変好評を博しています。)●「金色羅皇」はじっくりと日数を掛けて糖度を上げるJA菊池すいか部会では、2日おきの交配日表示を部会メンバー間で共通化しており、収穫直前のハウスを持つ農家が選果場に集まって頻繁に試割り会を行い、糖度検査を行い、収穫日を決定します。「金色羅皇」は交配日からおよそ55日もの日数を掛けて糖度査定を行うことにしていますが、この品種の特性として、在圃しても果肉硬度が緩みにくいので、栽培農家全員に積算温度計の使用を義務付け、農家は仕上げ期のハウス換気を入念に行い、しっかりと糖度が上がるのを待ってから収穫しています。こうした果実が選果場の糖度センサーによる検品を受け、高品質の果実ができる限りのバラツキを無くし、出荷できるようになっています。●産地として「金色羅皇」に取組み始めた意義「金色羅皇」は栽培性や品質維持の観点から、5月上旬から6月上旬までという出荷時期の制限を設けています。我々にとってすいかの後半戦となるこの時期は、他県のすいか産地との競合もあり、より付加価値の高い果実を出荷することによって農家所得を向上させるという狙いがありました。全国一のすいか産出県である熊本県でさえ、高齢化による作付面積縮小は毎年着々と進んでおり、我々としては農家の所得向上によって、この縮小に歯止めを掛けることが必須課題なのです。●栽培技術向上のための講習会・勉強会こうして令和5年から3年計画で「金色羅皇」の産地確立に挑戦することになりました。「金色羅皇」への取組みを希望するメンバーを募ったところ、部会員60名中、初年度は20戸、2年目となる令和6年度は25戸が手を挙げてくれました。
元のページ ../index.html#5