熊本県以前は毎年のように九州に台風が接近・上陸していましたので、台風対策としてハウスにビニールを被覆しない<露地>の状態で8月よりトマト苗が定植され、10月に天井被覆を行うという他県では見られない形で栽培がスタートします。被覆されるまでトマトは害虫に対して丸腰となるため、20数年前よりコナジラミが媒介する黄化葉巻病(TY)が流行しました。これに対し、6月下旬の栽培終了から次の作付けが始まる8月中旬までは管内のウイルスの連鎖を止めるため、管内からトマト植え付けを無くす期間を設ける申し合わせを組織単位で行いました。それと同時に取り組んだのが、TY耐病性品種の導入でした。■国内生産量トップのやつしろトマトの変遷JAやつしろでは、216戸の農家が193haの面積にて大玉トマトを栽培し、ミニトマトは109戸81haとなっています(令和6年度現在)。平成初期まで秋冬に大玉トマトを出荷し、その後作として春メロン栽培を行うのが一般的でしたが、需要の変化に伴い、メロン作付が減少し、トマトをそのまま長期栽培する形にシフトして来ました。当時はハウス暖房に使用する重油代も安く、農家はトマト長段穫りの栽培技術を徐々に高めて参りました。ここが郡築です!八代市 ・JAやつしろ郡築園芸部 上原 大輔さん ・河野 秀幸さん ●インタビュー ・JAやつしろ営農部指導員 藤本 王明さん ・古島 孝治さん ・山下 雄希さん(郡築園芸部は2025年8月に「JAやつしろ北部郡築園芸部会」として組織変更済み)●聞き手 ・高瀬 雅庸(ナント種苗)(2025年5月1日取材・撮影) 熊本県・JAやつしろ「TYプリマドンナ」産地レポート右から、藤本指導員・古島指導員・山下指導員河野秀幸さん上原大輔さん2九州のほぼ中央部に位置するJAやつしろ様は、「い草」の全国シェア約90%を占めています。また10月から6月までの長期間出荷される「はちべえトマト」が有名で国内トップの生産量を誇ります。中でも熊本のトマト生産を昭和36年の設立以来リードしてきた歴史ある部会が郡築園芸部(「JAやつしろ北部郡築園芸部会」〈通称・二水会〉に組織変更)です。八代海に面した干拓平野にある八代市郡築は、120年ほど前は海の底。圃場の30cmほど下の層にはその遺産である天然の塩分、海藻やカキ殻のミネラルを豊富に含んでいます。これにより、郡築で作られるトマトは、コクの深い美味しいミネラルトマトになります。郡築園芸部(組織改編前)は、55軒ある部会員のうち、約8割の農家で若手の後継者がおり、30〜40代の若手経営者も多く所属。「TYプリマドンナ」は、現在は同JAにおける主要品種となりましたが、中でも郡築園芸部の若い生産者によって、早い段階からの導入拡大が推し進められました。今回は、そのJAやつしろ様からの産地レポートです。まずは、同JAトマト指導員である藤本王明さん・古島孝治さん・山下雄希さんにお話をお伺いしました。八代トマトの「強み」をさらに活かすための「攻め」のプリマドンナ導入。高い技術とやる気みなぎる若きプロフェッショナルたちが繋げるミライへのバトン。
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