試験1年目の2022年度は8月に入ってから長雨が続き、炭そ病が発生。当初の目標を大きく下回る結果となりました。一方で試験1年目の「羅皇ザ・スウィート」は、他社品種同様の防除回数にも関わらず、炭そ病の発生が一切ありませんでした。それだけではなく、収穫された青果物の品質の良さも際立つ結果となりました。試験2年目の2023年度は、役員全員で試作することで前年よりも物量を確保し、選果機に通した際のデータも収集することを目的としてスタートしました。その結果、炭そ病への耐病性はもちろんのこと、選果機に通したことで、既存品種と比べ規格外率の低さ(うるみ果の発生など)も優れていることがデータとして示され、2024年度より正式に導入されることが決定しました。導入1年目は、試験の時と同様にA品率の高さが選果データとして示されました。栽培期間中には線状降水帯が発生し、一部の生産者で冠水被害がありましたが、中心糖度は試し割りの段階で12度以上と安定しており、出荷先からも高評価で終えることが出来ました。しかし、「羅皇ザ・スウィート」の栽培面で課題が残る1年ともなりました。最も生産者が苦労した部分は、「羅皇ザ・スウィート」の草勢コントロールです。既存品種と比べて初期草勢が強く推移し、着果不良に悩まされる生産者や何とか着果はしたものの、花落ち部分からの裂果が見られた生産者もいました。また生育初期の草勢が収穫時期までそのまま推移した圃場で収穫された「羅皇ザ・スウィート」は、糖度のバラつき(中心と皮際の差が大きい)が見られたケースもありました。このような課題を解決するために、生産者が主体となって意見交換会を開催し、元肥の施肥量を2割程度減らすこと・側枝の除去は草勢を見ながら行うこと・個人で糖度・熟度を確認してから選果場に運んでくることを確認しあいました。意見交換会の内容は越智ブリーダー・春名さんにも共有させていただきました。今回あえて栽培講習会ではなく意見交換会を企画したのは、より多くの生産者の方に栽培した率直な感想を発信していただき、良い点・悪い点を共有し、次年度に繋げることが目的でした。当日は大勢の方にお越しいただき、とても有意義な時間だったのではないかと思うとともに、炭そ病やうるみ果などによるロスが減少したことは事実なので「羅皇ザ・スウィート」への期待もより感じられました。●炭そ病とうるみに強かった「羅皇ザ・スウィート」。部会として「羅皇ザ・スウィート」の試験を始めることになったきっかけは、炭そ病による病果の発生が増えつつあったことでした。それまでは、他社の耐病性を持たない品種をメインに作付を行っていましたが、突然のゲリラ豪雨や長雨による炭そ病の発生、また大雨後の急な晴天が影響し草勢低下によるうるみ果の発生のため、出荷数量に影響を受けていたことから、役員会の中でも耐病性品種の検討が進められ、まずは大山部会長を含む4名の役員で各10株ずつから試験をスタートすることになりました。●導入1年目から真価を発揮。しかし、新たな課題も…2024年度からの正式導入に向けて、年内の9月と11月の2回、越智ブリーダーより品種特性および栽培のポイントについて座学による講習会を行っていただき、耐病性品種であっても防除は怠らないこと・既存品種よりも草勢は強く推移すること・成熟日数は長めに確保することを中心に生産者の皆様にお話ししていただきました。また、定植後にも2か所の圃場にて開催した現地指導会にも足を運んでいただきました。■栽培講習会の様子■現地指導会の様子■役員の方々に向けた栽培講習会の様子■試し割りの様子 6 草勢過多により花落ち部分から裂果が見られた圃場と果実
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